2014年1月8日水曜日

マルハニチロはなぜ冷凍食品の異臭を「農薬」と結びつけられなかったのか?


本日は、記事の感想。

マルハニチロの冷凍食品を食べた人が

マルハニチロ:東海3県で8人が下痢などの症状
マルハニチロ:福岡で吐き気や腹痛の通報2件
マルハニチロ:北海道で10人が嘔吐、下痢の症状
マルハニチロ:九州・山口で20人が吐き気など訴え

と、下痢と嘔吐が発生している問題です。


この手の記事が出るたびに、私は「この会社はISOを認証しているのか?」ということを確認します。
認証登録状況を調べた結果、認証を取得しておりました。

ISO、HACCP認証工場事業所(2012年11月1日現在)


ですが、JABで検索をかけたところ、アクリフーズは検索から検出できませんでした(マルハニチロは出てきました)
適合性組織検索

当該会社のHPには「アクリフーズ本社および群馬工場 ISO22000認証取得」と大々的に公開されておりますし、親会社の「マルハニチロ」は全社登録及び一本化の方向っぽいから、登録を返上したとは思えないんですよね……

もともとJABで登録していなかったのか、何かしらの理由があって検索情報から除外したのか。

今回のように、「事故」はたった一つの原因によって引き起こされるのではなく、さまざまな要因が重なり合って発生するのもというのが私の持論ですので、「何者かによる意図的な農薬の混入」としても、混入の背景にはさまざまな要因が潜んでおり、それがきちんと是正されないと同じ事件が発生するリスクを取り除くことはできないままでしょうという感想を持っています。

そもそも、農薬(薬品)を製造ラインに持ち込めるという状況が放置されている時点で、食品安全マネジメント上はNGじゃないの?という疑問があるんですが・・・・



マルハニチロはなぜ冷凍食品の異臭を「農薬」と結びつけられなかったのか?(1/3)
マルハニチロはなぜ冷凍食品の異臭を「農薬」と結びつけられなかったのか?(2/3)
マルハニチロはなぜ冷凍食品の異臭を「農薬」と結びつけられなかったのか?(3/3)

記事の中に
例えば、外から見ると「十分ありえるだろう」というリスクを「現実的ではない」と言い切る。こちらは、荒唐無稽な話をしているわけではないのに、「ウチの会社ではちょっとそれは考えられませんよ」なんて笑い飛ばす。つまり、組織の中にいると「あって欲しくない」ことを「ありえない」と錯覚してしまう人が非常に多いのだ。
このように記載されている。なるほどと思いましたし、全くの同意であります。

また記事の中に消費者から「石油、機械油のようなにおいがする」と電話があったとあり、その記事が呼び出されています。
マルハニチロ:苦情から自主回収まで1カ月半

さらにこの記事の中に「商品のにおいについて苦情があったら、直ちに外部の検査機関に送って原因を究明するというルールがなかった」という一文もあります。

この回答に対して「ISOを認証登録しておいて、それはありえるのか?」というのが疑問として浮上しました。
ISOは良くも悪くも「外部に対する対応については非常にうるさく要求している」というのが私の感想です。

ここでいううるさくとは「記録」や対応手順のことです。
14001を例に言うと、コミュニケーション全般に関しては「手順を確立し、実施し、維持する」とあり、そこからさらに外部からの内容については「受付、文書化し、対応する」と、内部については文書化していないのに対して、外部は文書化を要求しております。
また、外部からの問い合わせ内容が「著しい」ものであれば、「その決定を文書化し、対応方法を確立し、実施すること」という内容を要求しているからです。

つまり「匂いについて苦情に対しては、対応手順が確立されていなかった」という主張は、ISOの規格要求を満たしていないのではないのか?
5.6 コミュニケーション

5.6.1 外部コミュニケーション

食品安全に関する問題の十分な情報がフードチェーン全体を通じて利用可能であることを確実にするために、組織は、次の関係者とのコミュニケーションのための有効な手続きを確立し、実施し、維持すること。
a)供給者及び契約者
b)顧客又は消費者(意図した用途、特定の保管要求事項及び、シェルフライフに関する説明を含む)、引き合い、変更を含む計約又は注文処理、及び苦情を含む顧客からのフィードバックに関連する、顧客または消費者
c)法令・規制当局
d)食品安全マネジメントシステムの有効性若しくは変更に影響する、又はそれによって影響されるほかの組織

そのようなコミュニケーションが、フードチェーン内の別組織の製品に関連する組織の製品の食品安全面に関する情報を提供すること。このことは、特にフードチェーン内の他の組織が管理する必要のある、既知の食品安全ハザードに当てはまる。コミュニケーションの記録を維持すること。
法令・規制当局及び顧客の求める食品安全要求事項は、利用可能にしておくこと。
指名された要員が、食品安全に関するあらゆる情報を外部に伝達するための、明確な責任及び権限を持つこと。
外部とのコミュニケーションを通じて得られる情報は、システムの変更およびマネジメントレビューへのインプットとして含めること。

7.3 ハザード分析を可能にするための準備段階
7.3.1 一般
ハザード分析を実施するために必要なすべての関連情報は、収集され、維持され、更新され、文書化されること。
記録を維持すること。
上が食品安全の要求事項です。

認証登録は2009年ですから、4年は継続していることとなりますので、最低計5回程度の審査で、審査員は「異臭」に関する外部コミュニケーションを「ハザード」として捉えていないことをサンプリングできなかった、もしくは「異臭」を「ハザード」として捉えていない組織の経営方針に「問題がない」と判断していたのか。

私は食品系の職についていないのであれですが、食品安全や管理マネジメントでは、審査や内部監査において「異臭」に関する項目を「対象外」とすることを良しとしているのでしょうか?
・消費者は異臭に気が付いたが、製造過程では気が付かなかったのか?(製造過程で臭いに関するチェック項目はあるのかどうかという部分まで含みます)
・異臭がする製品の匂いを確認しなかったのか?
また、異臭の原因が、それがペンキのものであれ、農薬の混入のものであれ、それ単体というわけにはいきません。
異臭の有無を職員により確認できた時点で、それ単品の安全性の確認とは別に、その日に製造された製品および前後日に製造された製品の安全性に疑問を持ち、何らかの対応を行う仕組み(緊急事態の予防及び緩和対応)はなかったのか?
無いことは、ISOの要求事項を満たしていることになるのか。
それとも、対応手順はあるが、その通り運用されていなかっただけなのか?(それはそれでPDCAが回っていないので規格要求を満たしていないことになります)

この辺りは、きちんと確認したいところですね。

そして、
「農薬が混入されていた可能性」とありますので、製品の「残留農薬」が問題になっているわけではないと思います。
それは当然「残留農薬がない」ことを、製品の品質チェックの中で確認され、その記録より「農薬が残留した結果ではない」と判断されたのだと思います。
もし、これが製品の仕入れ時に「農薬の残留基準の値を契約において要求」しているだけで、「仕様を満たしているかどうか」のチェック(サンプリング等による)を怠っている又はその頻度が長いとなると、まずは「混入」よりもそっちを先に確認しなければ、被害は拡大し続けるからです。なので、優先順位を考えると、そのチェックはすでにクリアされているはず……という認識です。
そこは確実にしてほしいところです。
もし、ここを怠る場合、製品の仕入れ元の農家が、もしほかの会社に納入していた場合、その会社でも同じ問題が発生する「可能性」があることとなり、ことはこの会社だけの問題ではなくなるからです。

マルハニチロ子会社農薬混入問題は、「個人の犯罪」か「企業不祥事」か
この記事に
警察の捜査は開始されたばかりであり、現時点では、事件の真相は全く不明である。それどころか、工場での入室管理や、勤務体制に加え、農薬の混入が多数の商品に及び、混入の期間にもかなりの幅があることからも、外部者による農薬混入は極めて考えにくいということがわかっているだけで、犯人像ははっきりしない。
上記のように記載されており、先に心配したリスクについて、非常に不安を持つのですが・・・・・・・

マルハニチロ冷凍食品、衣から基準の260万倍の農薬検出
コロッケの衣から基準の260万倍に当たる2万6000ppmの農薬を検出していたことが7日、群馬県への取材で分かった。中身は4000ppmで、衣が高濃度だったことから、加工後に混入した可能性が高いとみられる。
とあり、加工後と判断していますが、それなら中身で数値が出た理由はなんだろうという疑問もあります。
ミキサーにかける関係で、比重の差から外部に偏った可能性はなかったのでしょうか?

また、作業員の衣類にはポケットはないので、持ち込めないそうなので、どのようにして持ち込んだと思ったのか?
マルハニチロHD:冷凍食品から農薬 「私物持ち込めず」 工場従業員の作業着、ポケットなし
包装作業を担当する男性従業員が取材に答えた。作業はポケットのない作業服を着用し、消毒済みのゴム手袋を使用。
二交代制で他にも作業員がいること及び、これはおそらくですがライン作業なんだと思います。
となると、混入するとなると他の人に見つからずにやるというのは難しいんじゃないか? 仮にできたとしたら、どのタイミングでやれたのか?
被害者の規模が大きい点を考えると、包装時に一つ一つ混入していくっていう作業を他の人に見つからずにできるというのは、ある意味すごすぎて……包装時に混入された可能性に至った証拠はなんなんでしょう?

体調不良、900人超に マルハニチロの自主回収進まず
市保健所は「原因はサバの可能性もある」としている。
このような話も出てきており、どうにも「犯人」を「特定」しようとしているのではなく、まずはメンツを守るための「スケープゴート」を「用意」しようとしているんじゃ?
流れがどうにも、そんな方向に向かっているんじゃないのかと心配してしまいます。

福島で起きた不審死(ポルナルフなニュース 炎上したごみ箱の中の焼死体は41歳除染作業員 白河署:「事件性は無い」 )みたいにならないことを、期待したいですね。


1月26日追記
製造年月日から絞り込み、ある作業員の靴に農薬が付着していたそうで、それをもとに契約社員を逮捕したそうです。
ただし、逮捕された人は容疑を否定しているとか。

動向はこれから明らかになるでしょうが、靴から検出されたのであれば当然、床からも検出できるんじゃ? 床に付着していたなら、他の人達の靴からも検出されるんじゃ? と言う疑問が先立ちます。
靴は私物ではなく会社の持ち物ですから、付着したタイミングを考えるととくに……付着していたという状況証拠と本人が会社に不満を漏らしていたという二つだけで逮捕のようですが、会社に不満のある他の人とか、この人に恨むがある人が意図して付着させた可能性もあります。

この人が本当に犯人なら、人事面談で何を見ていたの?と言う別の疑問もあります。
今回の件、真犯人が別としてもこのまま押し通すことでしょう。本人の自白に掛かっている状況でしかないからです。
警察は冤罪は得意ですからねー

2 件のコメント:

  1. 実は群馬の工場ではなく、Chinaで作っていたので原因が追求出来ないのだという根拠の無いウワサも・・・
    ((((;゚Д゚))))

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    1. >Chinaで作っていた
      なるほど、確かにそれでは原因の遡及の途中で政治的な圧力があって、犯人をでっちあげ(ry

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