2013年2月3日日曜日

韓国の純国産ロケットへの道は険しい?



多くの方が懐疑的似ている韓国による自前の純国産ロケットの開発についてです。
記事:ロシアの「無料提供」提案を断る 知られざる2段目ロケット開発の裏話
日本の場合、H-2は純国産、H-2AやH-2Bは準国産といった感じで、純国産ロケットの開発というのはそう簡単なものではありません。

日本の場合、いろいろ事情があってロケット技術の一部はブラックボックス化さらた状態でアメリカから購入しており、そのブラックボックス化された部分の独自の技術開発を行いたいが、安保に関わる面などの理由よりなかなか進んでいないという、政治的および軍事的な事情があります。
準国産というのは、コストダウンという側面が強く、固体補助ロケットブースターなど(SSBはATKランチ・システムズ・グループというアメリカ社製。SRBは日本製で、14号機以降はSSBは使用されていない)を独自のものではなく輸入によって解決しようとした側面もあり、国際競争で勝つために必要な措置だった。決して、日本が純国産ロケットを作れないというわけではありません。


韓国は10年で開発できると豪語していますが、そもそも固体ロケット燃料を使うのか、ケロシン(ロシアや中国が使っている燃料。別名灯油)を使うのか、液酸、液水ロケットにするのかというさまざまな選択があります。
打ち上げ場所、打ち上げ方法も重要で、赤道付近で打ち上げるのか?
つまり、オーストラリア大陸の砂漠など、赤道に近くいろいろな影響を受けない場所に射場を作るといった選択です。
日本ではクリスマス島に打ち上げ設備を移転させる話も出てきています。
これは、静止衛星軌道に「ロケットの力」で載せるか、「衛星の力」で載せるかという選択に影響を持ち、日本のように「衛星の力」に依存する部分が多いと、衛星に積み込んでいる移動補正や修正といった燃料の関係で、衛星一基あたりの寿命に影響してくるためです。
日本が種子島といった場所に置いた理由(沖縄や尖閣の場合、安保の問題や中国がうるさい。一応、もっと南の沖縄という選択はあったんですよ? 騒音の問題や打ち上げの振動による周辺環境の問題でなくなりましたが。ちなみに、種子島で打ち上げ時期が設定されていたのは、打ち上げ後の影響で魚が三ヶ月くらい居なくなるからです)
韓国の羅老は低性能(性能が悪いという意味)は固体燃料を使用しており、移動衛星は「衛星の力」に依存する部分が大きすぎます。

固体ロケットの技術は日本でもM-Vシリーズがあり(「はやぶさ」を打ち上げたのがこのシリーズ)であり、技術的に協力できない(日本がノウハウを持っていないという意味)というわけではありません。
では具体的に韓国が課題とする今後のロケット技術はなんなのかを検討してみます。

記事:エンジン4個を束ねて…「羅老」より力強い「韓国型ロケット」目指す
記事:宇宙開発:固体燃料ロケットの使用制限が障害に

韓国側として抑えるべき点として
・固体燃料ロケットの場合、総推力が毎秒100万ポンド以下でなければならない。(米韓安保上の制限)
・射程距離は800km以内でなければならないこと。
・固体燃料ロケットの射程距離は300km以内であること。

この三点でしょう。

これをみると、韓国側としては固体ロケットを「束ねて」推進力を増そうというもの。
これは正しいのですが、飛距離や能力及び用途を考慮すると、二段のロケットや一段のロケットとして利用するのではなく、ロケット本体を持ち上げるための補助ブースターとして利用する発想です。
これは「300Km」という距離を飛んだ後、燃料のなくなった空のロケットはただの「お荷物」でしかありませんので、切り離す必要があります。
「総推力が毎秒100万ポンド以下」である為、一段目のロケットを「クラスター化」してロケット単体の「推進力」の性能をアップさせることができないためです。


以上より、韓国の課題のまず1点目としては、従来の「羅老」とは別の、地上で燃焼することを目的とした固体ロケット(「羅老」は低圧(真空)で燃焼することを目的としたロケットである為)の開発が必要です。
1基当たりの目標重量は80t程度でしょうか。
燃焼時間としてはせめて100Sを目指したいところです。(羅老は25S)

ぶっちゃけ、日本からSRB-Aを購入した方が早いと思いますけどね。流石に規格が違い過ぎて、韓国側としてはノウハウがなさすぎ。
地上燃焼と低圧空間での燃焼のノウハウは違いますし、使用する燃料が固体、液体で使用用途、冷却機構が全く変わってきます。液体でも液酸・液水とケロシンでは燃料特性も違い過ぎてどうしようもない。
どうにも韓国側は簡単に考えすぎているようで気に入りません。
結局のところ、他国が使用した実績のある燃料を使い、見本となるロケットが存在する部分を後追いして技術開発されたロケットではなく、技術供与されて組み上げたロケットを以て純国産としたいという意図が見え隠れしていて………。
日本がケロシンロケットを辞めて液酸・液水を研究開発した背景やLNGといった従来にない燃焼エンジンの開発、ターボポンプの独自開発を相当の年数をかけ(金はあまりかけてない。政治家の馬鹿や経産省の馬鹿が原因)やっているというのに……それがどれほど大変なのか理解していない。
まったく、腹立たしいことです。

これらの課題とともに、一段ロケットの開発も必要です。つまり、液酸・液水といった固体から液体のロケット開発が求められています。(固体で行くという手もありますが、航続距離の関係で三段・四弾ロケットになってしまう)


正直、二段ロケットの羅老は固体燃料なので、再着火は無理です。二段をロケットで行くのであれば、今度は出力をどのように調整するのか?という課題が必要です。(液体であればポンプ圧の調整で出力変動できますが、固体の場合は微調整が難しい。なので上記のように衛星の能力に依存する形となる。
搭載能力のアップや国外からの衛星打ち上げ受注といった長期戦略的に考えると、どうにも失敗しているように見える……三段ロケットにして三段目を液体ロケットにするという戦略目標でもあるのかなぁ?
この三段ロケットという選択は悪くは無かったりします。宇宙輸送という側面からみれば、三段目のエンジンは「ロケットエンジン」ではなく「宇宙船のエンジン」としての基礎技術の確保になります。
また、ロケットにミサイルを積む。二段ロケットで衛星軌道まで持っていき切り離す。三段ロケットとフェアリング部に積んだミサイルはそのまま衛星軌道を周回させる。有事の際に三段ロケットを添加させて任意の場所にミサイルを投下する。という戦略兵器にも流用可能だからです。(この場合、ミサイルの迎撃はかなり困難です。いつ、どこから、どのような起動でミサイルが飛んでくるかわからないというのは脅威ですから)
とまぁ、つらつら書いてみましたが、やっぱり基本的な技術や運営、開発のためのロードマップが無いんだろうなという状況では、正直なところ難しいとしか言えない。

いっそのこと、ロケットの開発はせずに、従来とは違ったシステムの輸送技術の着手に乗り出した方が、成功した場合の他国に対する優位性が得られると思うんですよね。
たとえば、初速を得るためにロケットというのはそこで大半の燃料を消費しますので、その初速を得るための手段をロケットエンジンで作り出すのではなく、他の代替手段で(増すドライバーとか)代用して小型で大容量、大重量の物資輸送システムを確立するとか。
どのみち、ロケットによる物資輸送手段はすでに限界を迎えてて、各国ともに他の代替手法を研究開発中ですからね。
マスドライバーといった手段では、振動・安定性などの問題により、精密機械や人間といった物の輸送には向かないとされていたりしますが。人間のシャトル輸送は航空機のジェットエンジンからロケットエンジン+スクラムジェットエンジンのハイブリット型ジェットエンジンに代替することで問題は解決されるという方向ですけどね
さてはて、韓国という国は、ロケットの開発で『賢い選択』ができるでしょうかねぇ?

2 件のコメント:

  1. 昔から、ロケットの一段目が分離していく映像を観て不思議だったのが「何故、離れていく部分って筒だけなんだ?」というものでした。
    最近知ったのですが、アレって火薬が詰まってたんですねぇ。だから空になったら「捨てる」と。
    ところで、「液水」が液体水素なのは想像つくのですが、LNGの燃料って液体だと-160℃ですよね?管理が大変そう・・・

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  2. 鶏様、毎度です! 遅くなって申し訳ありません。
    >分離していく映像
    余談ではありますが、ロケットも経費削減で、あの映像をとるためのカメラも今はついていなかったりしますw
    (H2-Bはまだついているケースもありますが、Aの方はもうつけてないそうです。もともとは事故検証のための側面が強いらしい)

    >アレって火薬
    「火工品」って呼ばれる奴で、フェアリングの分離なんかでも使用されていますね。
    火薬を使う理由は「空気がない」場所であり「温度が極低温」という環境で「火をつける」というのはなかなか困難を極める技術の為、比較的簡単な構造で済む「火薬」が用いられるわけです。

    >管理が大変そう・・・
    いえいえ、液体水素や液体酸素よりは温度管理は楽ですね。とはいえ、従来の液体燃料は漏れても燃焼しても「環境には優しい」ですが、LNGの場合は、そうもいかず、、、という課題はあるんですけどねw

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