2013年11月26日火曜日

紙の削減活動及び紙の電子化による組織への影響


影響の範囲とか、そういう評価はあまりしてこなかったので、考え方をまとめるための雑文です。


環境やISOで大好きなのが「紙ゴミ電気」で、やり玉にあがる紙の使用量削減として、両面印刷や印刷機の制御(カードIDを差し込んでOKを押して初めて印刷できる運用)、裏紙の利用などが活動の母数としては大きいのではないでしょうか。

そして次に続くのが、電子プレゼンかな?と。


電子プレゼンの場合、プロジェクターの操作やパソコンの制御及びプレゼン用に資料をまとめる、さらに会議の配置は従来の議論(対話)形式からプレゼン形式になるなど、前者に比べてとたんに敷居が高くなり、活動の推奨としてやり玉に挙がったとしても、目的・目標及び実施計画などに反映されず(仮に反映したとしてもPDCAは回っていない)、実際に各会議を監視測定してペーパーレス会議を実施しているか?などまでチェックしないのではないでしょうか。


ISO審査でも、活動として推奨していても、実態の運用として様々な敷居の高さを理解しているのか、審査員がこの辺りを深く突っ込んで審査してきた。という話は、幸か不幸か聞いたこともなければ、経験したこともありません。
むしろ、ISO以外の現場を知らないHQ部門の事務屋が実情を知らずに簡単に支持してくるほうが、実に厄介ですね。


この辺りをきちんとやるとすれば、環境管理責任者(事務局)は大変です。
職員の力量としてまず、「プロジェクターとパソコンをつないだ場合の操作の方法」を技能として確保しておく必要があります。次に力量が担保されているかどうかを証明する記録が必要となります。
すべての職員が会議を主催し、進行するわけではありませんが、まず主任級以上の職員は何らかの形でそれを実施する必要がありますから、「力量の確保」と「力量を維持しているかの定期的な確認」は必要となってきます。
他にも、計画段階で一年間あたりに実施される会議の母数および各会議で消費される用紙の枚数を算出し、ペーパーレス会議に移行した場合はどの程度減るか?を数値の最終目標とし、年度あたりの目標達成率を定めるという仕組みが必要となります。
さらに、前回の会議で消費された枚数をベースにどれだけ削減できたのか?という「効果の確認」を行うために、監視・測定(または主催者に報告義務を課す)を行う必要も出てきます。
トップマネジメントは、これらが適切に行われるためのリソースを準備する必要があります。まずは、プロジェクターやスクリーンなどの購入に、訓練に必要な工数の捻出及び活動の為に各担当者が支払う加算された労務費など。



当然、経営上、活動を実施する場合は利益率なども求めますから、コピー用紙の削減及びインク代などの削減に伴う費用効果と、設備投資、訓練などにかかった総工数あたりの労務費を差し引いて、プラスになっていなければなりません。じゃないと、株主総会で社長はなんて説明するの?ってなります。

コピー用紙はA4で一箱2500円程度です。
仮に、会議で消費されるコピー用紙が一人当たり30ページ。参加人数が20人として一回当たり600枚。
会議数が月平均で4件とした場合、ひと月あたり2400枚。
一箱2500枚ですからまぁ、きりがよいところでひと月あたり一箱として年間12箱。
年間あたり、会議資料で消費するコピー用紙の費用は3万。


一回当たりの会議で資料の印刷及び配置などの準備に必要な工数を1h/人とした場合、月4h/人、年48h/人。
工数1あたりの労務費を4000円とした場合、192,000円。
合算すると、合計約22万/年

準備などは経費の安い人材を使う場合、労務費を1500円とした場合は72,000円。合計約10万。

仮に、もともと準備している資料がパワーポイントなどのプレゼン用で作成している場合は、資料作成の工数に変動はないので計算から除外しますが、そうではなく、工番をとられた資料をまるまる印刷し、会議の場で問題になる箇所を指定する(印刷資料に直接記載するなども含む)などの場合は、プレゼン用に位置から作り直す形となります。
新規プロジェクトなら~~~とまぁ、言い出したらきりがないので、資料の作成工数については変更なしとします。
逆に今のパソコン世代だと、工番をとった資料を作って準備するより、パワーポイントを作るほうが早いかもしれませんし。工番をとった資料を一時ソースとしない、番号のない会議資料が基準となるというのは別の意味でまずいのですが……

今度はペーパーレス会議用の訓練についてです。
維持については定期的にペーパーレス会議の実績があれば除外するとして、そうでない人などを定期的に訓練を提供し、力量の記録を取得する場合。
事務方は訓練用の会議資料を準備する必要があります。
ペーパーレス会議用に会議の進め方などのレクチャーとなりますが、体に覚えさせる必要があるので「資料を見ろ」では、パソコンに詳しい人ならともかく、機械に弱い人の場合は厳しいでしょう。
基本的に入社時の社員教育の中に盛り込むとし、定常的に会議を実施している人の場合は、力量の再訓練などを不要として工数から除外するとします。
そこから漏れる必要と思われる人数を算出するんでしょうが、この人数のきめがちょっとできません。
一回の訓練工数を2h/人(1h/人×二人)とし、年一回で対象人数は10名と過程するとして20h/人。
訓練費用は合計8万/年。
次に監視測定として、主催側に自己申告制度をとるとして、そのとりまとめ含めて会議1回あたり0.5h/人とします。
会議自体が月4件ですんで、月の工数は2h/人。年間24h/人となり、事務経費は24×4000の96,000円。
先の数値と合算すると約18万。取りまとめを経費の安い人材を使った場合、24×1500の36,000円
合計約12万。

労務費4000円:22万対18万 効果:4万(利益)
労務費1500円:10万対12万 効果:2万(損失)

ペーパーレスのアピールなど、広報的な効果はプライスレスなので除外するとしまして………
会議の手法を切り替えたことによる会議の助長や短縮も評価としては実施しなければならない点ですが、概算として計算に挙げるのは難しいので除外します。

結論的には労務費で前後しますが、利益も損益もないし、あっても大した額じゃないという結果に。

紙の電子化による組織への影響のうち、ペーパーレス会議の効果は「あってないようなもの」という結論です。
出た利益分、活動により発生した工数の人件費に消えてしまうという感じでしょう。


両面印刷も、元の紙代が3万円。両面印刷率100%とはいかないでしょうから、仮に4割とした場合でも約2万。利益1万ですが、周知や活動の許可などの事務的な工数などを考えると、逆にマイナスになるんじゃないかな?って思います。
活動するため、集計作業なんかも必要になってきますし、報告なども発生するので、そのための準備や応答などもありますから。
ある程度参加人数に変動があるとしても、主に事務所であり月の会議総数10とか20とかいう感じで多いという場合であれば、活動による利益として20万~50万くらいは出てくるかもしれません。
とはいえ、その規模になると一事業所当たりの従業員者数は千人を軽く超えているでしょうが……

裏紙の利用。
こちらは裏紙の利用率分、利益は出るでしょう。とはいえ、元が元ですし、上の両面とセットでしょうから、利益は微々たるもの。
逆に、情報流出のリスク(情報セキュリティ)を考えなければならない点を考慮すれば、割に合わないのではないでしょうか? セキュリティはセキュリティで識別のための工数が発生しているので、紙の削減ではなく、紙の廃棄方法については簡単でもいいので別途識別を不要とする仕組みを作ることで、文書管理の労務を減らすというのは有効かもしれません。(廃棄用紙はどんなものであれ、指定のダストボックスに入れるとか)


あとは、紙の電子化によって、文書管理の労務が減るというメリットがあるかなぁ。
決裁文書を紙媒体から電子決済に変更することで、紙の削減よりも実務工数の削減は、割と聞く話です。
まぁ、これを環境や品質のマネジメントの中でやっているという話は聞きませんけど、、、
電子決済の管理は情報担当者化財務が担当してて、品質管理の責任者や環境保全の責任者に位置する人がやっているという意味


以上はまぁ、お金の話。




環境的な面は一体何があるか?
なんといいますか、「資源の有効活用」とかいうお題目を掲げて活動をしていた気がしなくもないんですが、コピー用紙って廃棄のことを考えると、両面コピーなどしていない方が、再生時のエネルギー使用量は少なくて済むんですよね。(ようは、紙は出来るだけ白い方が良いというわけです)
なので、裏紙利用とか両面印刷、2アップ、4アップという場合、白色率が下がるわけですので、審査員の好きな「ライフサイクル」なんてのを考えると、出来るだけコピー用紙は片面0アップの方が好ましいわけです。

逆に、印刷面がガッツリの場合、最悪は再資源に向かなくなるので、「資源の有効利用」という名目を掲げる場合、当然のこととして「再資源化に適した状態での排出」も考慮すると、用紙の使用量の削減という活動は、資源の非有効利用になるリスクをはらむわけです。
むしろ、プリンター印刷時の設定で「トナーセーブ」の項目を指定し、薄く印刷させたほうがトナーの節約にもなるし上記の環境負荷も軽減される結果となりますが、あまりこっちは活動としては聞かないなぁ。

また、水質汚濁防止法の制定(旧名:工場排水等の規制に関する法律)の背景の一つとして製紙工場の排水問題は有名です。

今でなお、製紙については排水だけでなく、大気汚染や土壌汚染など、環境汚染のオンパレードです。
イメージ 1
これらの背景を無視して「資源の有効利用」と言うのが先に立つのは実に不思議と言わざるをえません。

もちろん、「直接じゃないから」という言い訳もあるでしょう。

では、紙ごみ電気の三つで比較してみます。

「直接じゃないから」それがまかり通るのであれば、当然、同じベクトルで電気を使うときの環境問題(特にCO2)も同じように問題にしないのが筋です。

しかし実際は、CO2の削減は環境活動として取り扱われています。ならば、同様に製造時の環境負荷の高い製品は一律、同じように汚染を問題として取り上げ、削減活動に従事するのが本来でしょう。

次にゴミです。
ゴミの場合、不法投棄により土壌が汚染され、汚染された土壌周辺の生態系を崩すだけでなく、流出した汚染物質が河川などに流れ込み、最悪は生活水に悪影響(浄水システムの処理能力を超える)を与えます。
廃掃法は滅茶苦茶ですが、その背景にはこれらの問題に対処したいという国の思惑があるわけです。
有料や値段が上がれば上がるほど不法投棄の件数がうなぎのぼりなんで、ゴミの排出をすべて無料にすれば、違反は一気になくなるんですが・・・不法投棄や適切な処理を目的としている割に、手段に傾倒しすぎて法も環境省職員も本来の目的が見えなくなっているんだよなぁ。
どちらにしても、事業所から手を離れているところの影響に、心とお金を砕く必要があるという意味では、CO2と同じベクトルと見るべきでしょう。なにしろ、排出者が何もかも悪いという扱いになっているのですから………

とまぁ、紙ごみ電気で比較すると、その影響として配慮しなければいけない範囲は、電気とゴミは事業所及び事業者の範囲内では収まらず、「外部への影響」まで考慮させられています。
騒音、振動、悪臭も敷地境界線の状況をベースとしてますし、排水も外部への流出地点での水質と言った感じで、事業所内でクローズする話ではなく、「周辺地域への悪影響を与えるかどうか?」がポイントになっています。
大気汚染も土壌汚染も、外部への影響を考慮されていますし、同様とみてよいでしょう。
これらを見ると、電気もゴミも排水など、規制されるべき基準やルールがある(法規制で整備されている)のに対して、紙だけが浮いている。より正確に言えば、「グリーン購入」も同様に「資源の有効利用」であって、他の「汚染」ではありません。

以上より、「削減活動」は大気汚染、水質汚濁といった環境汚染を低減につながることはあっても、「資源の有効利用」という位置づけとしては疑問が出てきており、環境管理活動として実施するには不適切ではないか?という考えに至ってしまいます。
コピー用紙一枚当たり、環境汚染をどれだけ引き起こしているのか?という評価するための数値は事業者が入手することはできませんし、そういった要求事項もないというのが実態ですから、ますますやる意味が分からない。


やっぱり、一般的に環境省などからもアナウンスされているやりかた、なんかちょっとおかしいよなぁ………可能な限り再資源化できる形で排出だよなぁ、、、でもこっちは、廃掃法の管轄(紙ではなくゴミの領分)だよなぁ(w。


なお、「資源の有効な利用の促進に関する法律」はで一部の鉱物資源(銅、鉛、亜鉛)は削減を求める傾向があるようです。

結論

影響の範囲を考えてましたが、そもそも論として根本的な部分に考え違いがあるため、影響範囲を評価以前の問題?


以上

4 件のコメント:

  1. 「ペーパーレス」にすると電子化の負担が大きくなるのでブレーカーサイズやら電線サイズの見直し等々・・・
    とても「環境にいい」とは思えませんわ。

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    1. 名古屋鶏様、まいどっす。
      一時期、「会議参加者全員にiPadを配ればいい」と言う声も上がりました。
      金もかかることながら、紙媒体でやり取りしてきた50代以上でパソコンに強くない方へのサポートが出来ないという理由で却下した背景があります。
      なぜできないか? 簡単なことで頭が固く新しいものを受け入れてくれな(ry

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  2. ペーパーレス活動の一環として、新聞の紙媒体を廃止するというのはどうでしょうか?

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    1. >名古屋鶏様
      >新聞の紙媒体を廃止
      マジレスします。
      新聞や雑誌の場合、古紙(再使用紙)を使用している為、この需要がなくなるということは、使用済みのコピー用紙の再資源化後の需要が無くなり、今まで有価で買い取られていた使用済みの紙の買い取り価格が下がり、「資源ごみ」と言う形で再び排出せざるをえなくなるかもしれません。
      そうすると、今まで利益になっていた物が損失に転換されてし…………あれ?むしろこっちの方が省資源(資源の有効利用)に繋がってむしろばんざい?(ぉ

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