2013年7月14日日曜日

LED照明器具の導入に関する留意点

LED照明を導入する場合の留意点についてをまとめます。


LED照明器具は性能がアップしてきており、蛍光灯とほとんど遜色がない状況となってきました。
しかし蛍光灯でも様々な種類があり、比較する場合は「どれと」「どのように」比較しているのかわかりません。
なので今回は、そういう部分も踏まえて比較していくことで、LEDの導入をどうするか?と言う参考にするための情報をまとめたいと思います。



1.LEDの方が光束量が少ないのにカタログでは同等の照度なのは?

大手メーカーが蛍光灯(FLR)の場合の照度図とLEDの場合の照度図を比較し、ほぼ同等であるという表現をしているケースです。しかし、同じ蛍光管タイプでも、従来の蛍光よりLED照明の方が光束と呼ばれる、光源からある方向に放射されたすべての光の明るさを表す心理的な物理量は少ないのが現状です。

FLRといった従来の40W型蛍光管では、2700lm~2900lm
Hfといった電子蛍光灯式の32W型蛍光管では3500lm(定格)

ではLEDはというと、大手メーカーが従来品と比較して同等としているのが、2100lmと2割落ちの数値です。

光束量を単純に比較すれば2割ほど暗くなっている計算になります。
しかしこれは、「設計照度」の関連もあり、LEDは上面に光を放射しない関係で、器具が汚れることによる照度低下(カバーの汚れによる光の反射率が落ちる現象)を考慮しなくて済む点がメリットとしてあるためで、照度設計値は同等である為、灯具であるLEDの光速量を二割落としても問題が無いという、ちゃんとした理由があります。なので、新品と比較すると二割落ちるが、二年後は同じ照度(蛍光管のランプは新品状態)になっているという考え方です。


2.LEDの蛍光管を見ると、前に比べて明るく見えるのに照度測定の結果はかわらないのは?

目の錯覚です。と言いたいのですが、錯覚ではありません。発光面当たりの光束量が違います。


蛍光管は全面から光を放射しているのに対して、LED蛍光管の背面は光を放射していません。そのため、面積当たりの光の発光量に差が出てしまうためです。





3.LEDを眩しいと感じる理由

一言で言えば、グレアが発せしている為です。

え?今のLEDは乳白色カバーでグレア対策しているよ?と。
いえいえ、別にグレアの問題はLEDに限らず、Hf蛍光灯 でも問題になっており、様々なグレア対策(直接蛍光灯を見えないようにする工夫)が施されております。埋め込みタイプなら、グレア用の正方形に切ったメッシュのようなモノがあったり、器具に深さがあったりと。まぁ、そういうのは大抵、高出力タイプに多く見られますし、グレアが発生するのは気にせず発生させたままというものも多いのですが………

で、グレアの問題ですが、これも現状としては発生しています。
 


このように、明暗の差がLEDではより顕著に出ます。
まぁ、これも先に「明るいように錯覚する」理由の一つではあります。

グレアに対して補足すると、照明器具としての用途ではグレアはデメリットで対策が必要ですが、表示灯としては、出来るだけグレアが発生するようにします。
グレアが発生すればするほど、視認性がよくなるからです。
グレアが発生しないと、周りの風景に溶け込んでしまい、人は気が付きません。

夜間、遠くからでも光が見えるのは、その光が「風景に溶け込んでいないから」です。だから、小さな光でも遠くから見えるわけで、これが周辺の灯りと同じ程度の発光でしかなければ、人は気が付きません。
そのため、表示灯としてのLEDはすごく優秀で、導入に対して異論をはさむ余地はありません。

4.手元作業がし難くなった。

これは配光の問題です。
光源が複数ある場合、光は乱反射するため、複数の方向、角度からも光が照射されます。
しかしLEDの場合、配光パターンが蛍光灯と異なるため、この「反射された光」の角度と方向が異なってしまいます。
そのため、従来であれば手元の影が乱反射されたために薄かったのが、LEDでは濃くなる。と言う現象が発生し、手元作業にストレスを感じるようになるという状態が発生する場合があります。
 


ただし、この配光パターンは取り付け器具によって特性が違いますので、一概に言えない部分があります。


逆富士器具の場合
 

埋め込みの場合
 


ダウンライトの場合(こちらは電球と同じ配光パターンのLED電球と従来LED電球の比較です)
 


電球タイプはともかく、大手メーカーの出しているLED蛍光管の場合は、まぁ逆富士の方がちょっと直下のcdの位置が気になるとはいえ、特に配光に関しては気にする必要はありません。ただ、LED蛍光管の場合、照射角が120°とかそういうのもあります。
ですので、この角度が出来るだけ180°を超える物か、取り付け時の配光が蛍光灯とほぼ同じ傾向(またはそれ以上に横に広がりがある物)が好ましいでしょう。
(なお、ベースライト(器具一体型)の場合もきちんと評価した方が無難です。均一性が妙に偏ってたりするのを見ると、どうにも照射角はLEDチップに頼っている感じがあり、あまりよくなさそうなので)


5.なんだか黄色く感じるんですけど

従来照明の場合、照明の色は「色温度」で表現されてきました。


黄色く感じるのは、xy色度図上のどの位置に該当するのか?と言うのがポイントとなります。

 ファイル:CIExy1931.png




一般的な色温度の位置は下記のような一に該当するようです。



なので、表示の色温度がこの線上にあればよいのですが、LEDの場合、チップの種類によって上下左右にズレが生じることがあります。

これが、同じ色温度でも、黄色く見えたりする原因ではないか?というのが、私の推測です。
ですから、出来るだけ実物を確認し、比較してみるか、もしくは予定の色温度の物から少し色温度を上げてやるなどの考慮した方が良いやもしれません。


6.演色性(Ra)って?

これも今は特に問題は無いとは思っています。
太陽光を1(または100)として(最高値)、蛍光管の場合は75程度~85。
三波長タイプで90だったのに対して、LEDが販売された当時は70と悪い物でした。
今でもこの数値の物は存在しますが、この演色性については改善されており、今では80を超える物も一般的に普及しています。ただし、極端に低価格の品の場合はこの演色性の数値は見込めませんので、確認は必要です。


演色性が悪いと問題になるのは、あたとえ明るくても物が見え難いという事態が発生します。
光はものに当たった時に反射しますが、物の色によっては反射しやすい色と反射しにくい色、吸収する色などの性質があるためで、演色性が悪いと、自然光を絶対値とした場合に照射される光の色の量の違いにより、物自体が色褪せて見えるようになるためです。


この「色あせ」を利用したのが、スーパーの生鮮食品売り場の照明です。
例えば肉類のコーナーに設置する照明は出来るだけ標準の蛍光灯ではなく、ピンクに偏った照明を設置することで、新鮮なように見せかける。 といった手法が用いられます。
(ただ、この照明をオフィスに設置したら、演色性は悪いでしょう)

そのため、演色性についても場所と用途次第の面もあり、 一概に数値だけ見ればよいというわけでもないので、何とも言えない部分があります。
(世の中には、よく見えた方が良い場所と、見えすぎない方が良い場所というのがありますので)
とはいえ、オフィス用では現状の平均照度が500lxの場所ならRa85くらいは欲しいですが、1000lxを超えるような所ではRa75あれば十分、手元の精密作業を行う場所ならRa90で、ホールや講堂と言った場所ならRa70と、自分なりの基準を持っていれば、そうそう失敗することは無いでしょう。

ただ、この点についてはLED独自の問題ではなく、従来の蛍光管タイプでも発生していましたので、LEDの出始め当時の選択肢が無かったころならともかく、今なら従来と同じような感覚で製品を選択すれば問題ないかと。


7.最後に

エネルギー効率が160lm/Wの蛍光管タイプがすでに発売され
http://www.endo-ledz.jp/wp-content/uploads/2012/08/160-e1371587578320.jpg

 何気に恐ろしい状況ではありますが、現状としてはまだ様子見をした方がよいでしょう。


その理由の一つはJIS規格の制定により、ソケットタイプがLED専用口金(GX16t-5)となった点がひとつめとして上げられます。

参考:経済産業省:日本工業規格(JIS規格)を制定・改正しました(平成25年4月分)
これにより、従来器具を改造したバイパス工事が難しくなった点が挙げられます。
また、このソケットの問題ですが、ランプに電源内臓しているか、外付けかという部分が不明瞭であり、また電源が外付けの場合、ソケット部分への出力についてもDC140Vなのか24Vなのか12Vなのかと言う部分が標準化されていないため、ソケット対応のほかのメーカー品取付時の事故が怖いという状況がいまだに存在したままです。
これは、同メーカー品でも、ランプの型式が違った場合はどうなるか?と言う部分も懸念されるため、それぞれきちんと評価して管理できるならともかく、そうでないなら、安全性や製品に対する規格がきちんとルール化されるまで、待っていた方が無難です。


なので、どうしてもLEDを入れるという場合は、器具一体型のベースライトタイプにするか、E26やE17の電球ソケットタイプと言った部分に限定するのが無難となります。



以上。





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