2014年4月26日土曜日

記録のために仕事をしているのではない。(1/3)



「ISOを認証登録してから、記録が増えた」

他の方々は分からないが、私の周りではこのような意見を持つ人は多く、よく聞きます。

そんな状況をベースにおいた、実例をベースとしたやりとりです。長くなったので三つに分けました。 その一




「相田、管理課から提出されてくる記録の様式が、システム文書で提供されている様式に変更されているが、どういう調整をしたんだ?」

「ああ、それですか。あなたがやっていた時に提出されていた記録では、データの見方がわからないから、こっちの様式で提出するように指示を出したんですよ」

「それで、向こうで従来やっていた様式に基づく記録はどうなったんだ? 止めさせた形になるのか?」

「いいえ、こっちの様式にデータを書き写すそうです」

「………」


私は相田の話を聞いて、あきれてしまった。つまるところ、記録の「翻訳」をさせたわけである。
私は事実確認のために、管理課の葉山のもとに訪れた。

「葉山さん、ちょっといいかな?」

「柾さん? はい、なんでしょう?」

「相田から聞いたんだけど、化学物質の使用量の報告の様式、環境管理で提供している台帳に書き写しているって聞いたんだけど」

「はい、相田さんから、そっちに書いてほしいと依頼されましたので」

「従来の様式は、継続して作成するんだよね?」

「はい、前の物の方が運用として離れていますし使いやすいですので」

「了解。手間をかけさせる形になってるね。やらないで済むなら、従来通りの方がいい?」

「書き写すのはそこまで時間がかかるものではありません。一時間くらいでしょうか? 手間といえば手間ですけどね。あれじゃないとだめだと言われれば、仕方がないじゃないですか」

という話をしていると、片岡が話しかけてきた。

「なに、何の話をしているんだ?」

「薬品の管理台帳の話ですよ、課長」

「管理台帳? そんなのがあるのか? 購入伝票なんかの数値をまとめた表ではなく?」

「ええ、その表から数値を拾い出して、台帳に記入しているんですよ」

「薬品の購入って言っても、結構な量があるだろう?」

「ありますね。でも、台帳管理を要求されているのは、各課の方で購入しているものではなく、管理課で管理しているものだけになります」

「灯油タンクの数量とか、車のガソリンとか、そういうのですね」

私が引き継ぎ、管理課で管理している物品名を答える。

「いままで、購入されてそちらでまとめていただいていた表を、うちでそのコピーを戴いていたんですよ」

「ふむ、それじゃまずいのか?」

課長の質問に、葉山が答える。

「相田さんから、その表ではなく今後は定められた様式である管理台帳に数値を書き写して、そっちで提出してくれと要求されました」

「そっちの様式で記載しなければならないような、不都合があるのか?」

「さぁ? そこまでは答えていただけませんでした。単に、薬品類はそれで管理するというルールだから、そっちでやるのが筋でしょうっていわれたので」

「そうなのか?」

片岡課長が、私に問いかけてくる。

「厳密に言えば、その通りです。とはいえ、どちらかといえば取捨選択するような細かなルールを定めていないから、そうなってしまっている。というのが正解ですね」

「うちとしては、そんな二重帳簿みたいなことは、やりたくないんだが」

「同意ですね。様式に記載することが目的ではなく、数量を管理することが目的ですので、現場で運用がしやすい様式や慣れ親しんだ様式があれば、そちらを使用してもらって構わないというのが私の考えです」

「ISOの様式に基づいて集計しないと、なにか不都合があるのか?」

「ありません。単に、様式がばらばらだと、事務局側が集計しにくいというだけの話です。まぁ、様式の統一というのは、きちんとしたメリットはあるんですが……」

「各部門がそれぞれISOの様式に書き写す手間を考えれば、事務局で一括して書き写した方が、手間がなくていいんじゃないのか?」

「それをやりたくないんでしょう。データを集計する作業が別にありますので、二度手間・三度手間を強いているようにしか見えないんですが」

「そういうことなら、前の通り写しの送付で問題がないと思うが?」

片岡がそのように言ってくるが、私は困ったように首をかしげる。
私が担当していた頃は問題がなかった。しかし、相田に変わったことで問題となる。 今回の件でいえば、様式の違いは事前に説明し、データの集計についても説明済みであったので、単に相田の好みの問題でしかない。しかし、このような事例は今回だけでなく、多く発生し、今回のような現場に負担が増えてきているわけである。
外部から見れば、「担当者が変更したことによって発生したトラブル」の範疇で、そのトラブルの責任は課及び係、そして前任者の私にも存在する形となる。それを自覚していたので、管理課の葉山に事情を確認したわけであるが、今回のような「担当者の好みの違いによる弊害」とも「業務に対する姿勢(スタンス)が違いすぎることによる弊害」が原因として根付いている場合、是正するにしても当事者である私では、解決することができない。

私は、片岡課長に検討すると伝えて、その場を後にした。

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