2013年8月15日木曜日

職人の教育でこんなに自覚するわけがない

 

(本日は人づての話なので、再現性にあまり自信はありません)

久我山「長尾さん」
長 尾「おう久我山。一服か?」
久我山「はい」
長 尾「ふー。久我山」
久我山「はい」
長 尾「大丈夫か?」
久我山「大丈夫、、とは?」
長 尾「さっき、石井さんに怒鳴られてたろ」
久我山「ああ、アレっすか」
長 尾「そうそう。それの相談に来たんだろ?」
久我山「分かるんすか?」
長 尾「そのくらい分かるさ。それに、あんだけどえれぇ声で怒鳴られてらな」
久我山「なるほど」
長 尾「ふつうは周りのやつらが止めるんだけどな。はっきりいって、なにやってんの?って感じだわ」
久我山「内容まで聞こえてました?」
長 尾「いいや」
久我山「簡単に言えば、『お前は社会人としての自覚がねぇんだよ』って怒鳴られたんですわ」
長 尾「『おめぇの方こそ、社会人としての自覚がねーんだよ』って言ってやればよかったのに」
久我山「さすがにそれは言えないっすよ」
長 尾「そうか?俺なら言うけどな」
久我山「長尾さんだから言えるんですよ」
長 尾「そう? それで、何が原因なわけ?」
久我山「仕事で、分からな部分があったんで聞いたんですよ」
長 尾「どのくらい?」
久我山「割合としては全般ですね」
長 尾「ふ~ん。それで?」
久我山「あまりにもしつこかったみたいで、『そのくらい、自分で調べろ!』って怒り出しちゃいまして」
長 尾「調べてないわけじゃないんだろ?」
久我山「はい。まぁ、結構細かいことを聞いたんで、それが気に入らなかったのかもしれません」
長 尾「いや~、そのくらいで『社会人云々』なんてのは、普通は言わないから」
久我山「そうですか?」
長 尾「当然だろ。はっきりいって、かなり異常。まぁ、あの人は怒鳴らなくても相当陰口で他人のことを言いたい放題いってっけどな」
久我山「自分のことも、陰で言ってるんですかね?」



長 尾「もちろん、当然言ってるぞ」
久我山「うわ……自分、なんて言われてるんすかね?」
長 尾「本人の前だから言うのは止めるけど、安心していいぞ。あの人が陰口をたたいていない奴はいないから。俺なんて、そうとうぼろくそに言われてっから」
久我山「それはそれで駄目じゃないっすか」
長 尾「なんも出力もしない、遊んでばかりのやつに、何を言われたっていたくねぇから」
久我山「さすがっすね」
長 尾「さすがじゃねーって。それより、何を聞いたんだ?」
久我山「ああ、そっすね。えっとですね。作業の手順とか点検項目とかっす」
長 尾「……それがなんで社会人の自覚が無いって言われなきゃいけねーんだ?」
久我山「よく分かんないんすよ。どういう背景でこういう手順になったのか?とか、全部が全部わからないわけじゃないんすけど、点検項目で点検している理由がわからなかったり、理由は分かるのがあっても、わざわざ点検する真でもないようなものもあるんで、どうしてなんだろう?って思ったんで」
長 尾「それで、聞いてみたってわけか?」
久我山「はい。そしたら、『わざわざ人に聞くようなことでもない』とか『俺が答える話でもない』とか、のらりくらりいうんですよ」
長 尾「長尾」
久我山「はい?」
長 尾「おまえ、それは石井さんもわかってねーんだよ。お前、聞く相手を間違ってんだって」
久我山「いや、そんなはずないっすよね。あの人上司っすよ? 自分より給料に倍近く貰ってるんすよ」
長 尾「んあこたぁ、わかってるんだよ。だけどな。石井さんは、マネジメントが出来ない人間だからな」
久我山「マネジメントが出来ない?」
長 尾「ああ。自分は出来てるって思いこんでいるけどな。あの人は気分で仕事をするの、分かってた方が良いぞ」
久我山「そうなんですか?」
長 尾「ああ。自分が出来ていないって、全然自覚できてないのが欠点だな」
久我山「でも、あの人もう50歳を超えてるんすけど。それに、出来てないなら、きちんと自覚させるのが上司の仕事でしょ?」
長 尾「上司っていうと、浅井さん?」
久我山「うっす」
長 尾「上司が出来てないから、部下も出来ないんだよ」
久我山「そうなんですか?」
長 尾「下が育たないのは、よくよく確認すると教育係自体が育っていないケースがほとんどなんだよ」
久我山「でも、職人気質って場合はどうなんで?」
長 尾「反論はあろうが、同じだよ。その職人も出来ているようでできてない。なんつーかな。いいたかねーけど、職人なんて言われている連中で下が育ってねーところは、その職人は大人になれなかった子供なんだよ」
久我山「子供ですか? でもああいう人たちって、見て覚えろ、技を盗めってのが基本じゃねーっすか?」
長 尾「『なにゆーちょうなこと言ってんだよ、この馬鹿が』以外の感想はねーな」
久我山「言いますねー」
長 尾「言うさー。下に指導しない時点で、それはただの言い訳でしかねーしな」
久我山「でも、日本はそういうやり方が一般的なんじゃ?」
長 尾「個人の矜持で会社を危険に晒している時点で、ふざけたやり方ではあるんだ。それに、根本的に思い違いしてるぞ」
久我山「思い違い?」
長 尾「大体そういう『伝統職人』は、家族経営だったり師匠と弟子という関係で、文字通り『後継者』っつー位置付けで、むしろ指導はがっつり厳しいぞ。でもお前の考える職人の場合、弟子が師匠の寝首をかくような関係をイメージしてるだろ?」
久我山「そうっすかね?」
長 尾「勘違いしてるやつが多いけどな。本当の職人ってのは、弟子に無理やり作業をさせて、『体で覚えさせる』指導をするんだ。失敗したら『なんで失敗したんだ!』『ばかかおめーは!』と怒鳴る。でも答えは教えない。これは答えを考えさせる。何度か失敗をさせて『手本』を見せるだけ。そしてまた同じ作業を弟子にやらせる。職人ってのは基本、これの繰り返しだ」
久我山「なるほど。言われてみれば、そんなイメージもありますね」
長 尾「本当の職人ってのは、弟子が積極的にならなきゃなんねーとか、弟子の自覚云々とか、問題にはしねーもんだ。あるとすれば『辞めるか、続けるか』の二択だな」
久我山「厳しいんすね」
長 尾「去る者は追わずだが、去らない者には実の父親以上に厳しく当たるもんだよ。本当の職人ってのは」
久我山「じゃぁ、先輩方は職人ではないと?」
長 尾「本当は分かってんだろ?『職人』で言わずに『職人気質』って言ってるってことは、連中を職人ではなく、自分にとって都合のいい部分だけ職人の真似をしているだけのエセモノでしかないってことが」
久我山「確かに、そういわれると納得できる部分もありますね」
長 尾「『職人』であることが許されるのは、伝統業だけというのを知っといた方が良いぞ」
久我山「ういっす」


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「っていうことがあったんすよ」
長尾はそう締めくくり、私の意見を尋ねる。私はやきとりの皮を頼みつつ、横耳で長尾の話を聞いていた。
長尾のいいところは、同じ話でも複数の他人に話を聞き、一つの答えに執着せず、できるだけ客観的に判断するための情報収集を怠らないことだろうなと思いつつ、冒頭の部分に答える。
「長尾さんって、職人に対していいイメージもってないんすね」
長尾が職人に対してネガティブな最大の理由は、彼が先輩から教育を受けた人間ではなく、業務の手法から手順まですべて自分で「開拓」した「開拓人」である点が最大の理由だろうと伝える。
「開拓民ですか?」
表現するとそうだと答える。長尾自身が業務を指導と教育を経て引き継いで貰えなかったこともあり、彼は結局業務を一から構築する羽目になった。そのため、
結果として指導と教育が十分に伝えていない、伝わっていない状態にあることに責任を感じていない人に対して辛辣になるのは仕方がないと付け加えた。
「なるほど、そういう事情があるんすね。確かに文字通り仕事を開拓した状態だから、開拓人っすか。ん? 最大でない理由ってのもあるんすか?」
それは、職人が伝えるべきことを「理解」していない、「自覚」していないことがそうだと伝える。
「理解していない? それってどういう?」
どうもこうもない。ISOの要求事項だけを抜き出し「自覚教育」の部分を以噛み砕くと、
・経営方針及び組織体制、経営及び運用手法、会社が社員に対する評価基準や出世基準を理解する。
・自分の所属する課や係の売り上げが、会社の利益の何%を占め、原価率が何%であり、利益率を上げることでどれだけ会社に貢献できるかを理解する。
・自分の所属する課や係に対して、お客様が何を望まれているか、どのようなサービスが提供できるかをきちんと理解する。
・自分の所属する課や係に対して、他の部門とどういう連携を持って仕事をしているを理解する。
・自分の所属する課や係の業務が滞ると、お客や他の部門にどのような影響があるかを理解する。
・自分の所属する課や係の業務において、気を付けるべき点(コンプライアンス)を理解する。
これらのことを理解し、重要性を自覚する必要がある。というもの。
「ISOの自覚って、そういう意味なんですか? 初めて知りました」
この解釈が絶対ではないし、確信があるとは言えない。しかし、ISOに携わり理解を深め、社員や会社に対する実益を求めた結果、このような解釈に至っただけである。
まず、これがきちんと出来ているかどうか。これが出来ていなければ、それこそ力量のための教育訓練などを行ったとしても、効果が発揮するために何度も訓練を繰り返す必要がある。私はビールのお代わりを頼みつつ、そう答えた。
「伝える本人が仕事の重要性を理解していない、自覚していない状態で指導をしても、効果は認められないってことっすか?」
それもそうだが、それ以上に、本当に重要なことは、全体の流れと繋がりを理解していない。これを理解できていないと「管理」や「経営」といった「マネジメントができない人間」と呼ばれるようになる。
マネジメントができない人間の問題点として、長尾の今回の件で言えば、何が必要で何が不要か?という判断ができないという点だろうと答える。
「なんていうか、笑えない状況っすね」
全体マネジメントができなくても、あくまで単位と範囲レベルの話であり、特定の一作業範囲、、、たとえば、特定の設備の維持と運用という範囲内でのマネジメントで十分というケースもある。なので、本当の意味で「マネジメントができない」というケースの人間の場合、久我山の言うとおり「笑えない」のであるが、そうそうそういう人間はいない。
「ああ、知ってます。手段は目的の為を達成するために存在するのに、手段のための目的だったり、目的とかどうでもよくて手段に固執する人のことですね。水道管が破裂したときに、連絡もせず、二時間眺めてなにもしなかったり、パスが壊れて停電したときに、停電の原因を探るためにみんな出払っているのに、ポツンと席に座って何もしなかった人たちのことですね」
前者はともかく、後者は彼らは彼らにできる役割を与えられなかった不幸もあるのだが、、、と思いつつ、まぁ積極的に役割を得ようとしなかった点から、社員という自覚が欠落しているともいえるかなと思い直した。
そして、これが請負や非正社員(契約社員)やアルバイトだと、緊急時といえどもその対応と行動には責任が存在し、雇用元が緊急時の対応における彼らの行動のすべてに指示命令がなくとも、鎮圧のために起こした行動におけるすべての責任を負うことが義務としてあるのだろうか?
なければ、彼らの所属先会社のリスクマネジメント上、指示命令がない限りは自分の身の安全を確保しつつ、何もせずに待機させることになるのでは?
どこでどう線引きすればいいんだろうか? などと、別のことを思いつつ

私は作業の手順や点検項目、そして記録をとるというは、あくまで先ほど自覚教育において理解した後に、それを達成るためのアプローチの手段でしかない。重要なのは失敗したときのリカバーするだけの力量を持つことであり、そこをきちんと「誰か」が自覚し、行動することができているからこそ、会社というのはそうそう最悪の事態にならないわけだと、追加のオーダーを行言った後に答えた。
そして、その「誰か」が職人であっては困るんだとるけ加える。
「なるほど、自覚があれば、力量は後から追いついてきますしねぇ」
久我山の言葉に、私はうなづく。

リスクを放置できる自覚なんてものは存在しないのだ。

よって、職人気質の人間の下で働いている職員が、自然と自覚すべき事を自覚することができるか?という部分が今回のポイントになるだろうと答える。
「基本は、人それぞれですよね。 長尾さんは自覚できない、力量も身につかないという認識っぽいですけど」
私は、最初に戻るが開拓人である長尾が最大の理由で懸念していることは、「見て覚えろ」では模倣で終わってしまい、それじゃダメだということを理解し田植えでの発言だろうと付け加える。
「その言い方だとよくわかります。コピー商品だと品質が悪いわけっすね。メイドinコレAとかメイドinチャIナとか、良い実例あるとわかります」
単に模倣できているのであれば、品質は劣化しない。劣化の原因は、自覚すべきことを自覚していないこともあるが、製品を製造するためにマネジメントの手法は自分たちで用意し、模倣元のマネジメントまで模倣していないのが最大の要因だと、私は思っている。
「なるほど、長尾さんは『職人の教育じゃ人は育たない』という見解みたいですけど、柾さんは『職人(笑)の教育じゃなにも自覚しないが、職人(本職)の教育なら人は自覚し自ら育つ』という見解なんですね」
そんな感じかな?と締めくくり、仕事の話は今日は終わりだといって閉めた。

2 件のコメント:

  1. 俺妹のロゴジェネですかw 初めて見ました。オモシロイですね。早速ググって遊んでみました。
    昔、ある人に言われたのが「組織はトップ以上に良くなることはない」でした。アホな職長に優秀な部下は育たず・・・

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    1. 名古屋鶏様、まいどです。
      ロゴジェネの方、画像が無いのもさびしいなと思って、適当に探してみました。
      他にも色々あって目移りしますよね。

      >優秀な部下は育たず
      前文に、「先輩方の指導によって」があれば同意ですね。
      世の中、自立した人間は反骨精神で勝手に育ったりするケースもあるものですんでw
      (とはいえ、そういうケースは上司が適切に評価できない、しないため、結局後に続くものに指導をせずに一発屋になるみたいですがw)

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