2013年12月18日水曜日

電燈器具の選択


「あれ? 柾、このLED電球って、火災報知器に使うやつ?」
「ええ、そうです。正確には『使用済み』のものになります」
「壊れて使えなくなったの?」
「いえ、壊れていません」
「何と交換したの? なんで交換したの?」
「何と?のほうは、別のLED球と交換しました。なんでについては、暗くなったからですね」
「なに、LEDって劣化するの?」
「照明用途に使われているものはどうかわかりませんが、赤色LEDの場合、屋外で使用しているものはそうですね」

「屋内は問題ない?」
「問題ありません。そっちは交換していませんし」
「紫外線か何かで劣化したの?」
「そうです」
「でも、昔の白熱球タイプだと、そんな話は聞いたことないぞ」
「まず、赤色と言うのは紫外線に反応する色です。なので、通常の紫外線劣化だけではなく、LEDの発光面と反応した結果なのでしょう。ランプカバーも赤色ですから、そっちもかなり劣化していますよ」

「確かに、ずいぶん劣化するもんだね。どのくらい?」
「前に交換したのは5年前です」
「白熱球のころは?」
「年1回は交換していましたね」
「値段はどんなものなの?」
「カバーは数百円でしたが、LED球は500円~1000円といったところでしょう」
「そんなにするの!? 白熱球なんで一個数十円でしょ!?」
「交換のための人件費まで見れば、LEDのほうが安いでしょうが、確かにおっしゃる通り高いですね」
「なんでこんなに高いの!? LEDのナツメ球のほうが200円くらいで安いんじゃない?」

「まぁ、ほとんどのメーカーが作っていないので競争が発生しない関係上、強気の値段で行けるのでしょうね」
「それにしたってぼり過ぎだよ。100円ショップでも売ってるナツメ球と何が違うの!?」
「違いはありますね。規格口金がE12同士でも、交流電圧の規格が24V~30Vに対して、ナツメ球は100Vですから」
「じゃぁ、使えないの?」
「そこが難しいところでしてね。火災報知器に使用されるLED球をナツメ球代わりに使うと問題が起こるかもしれませんが、ナツメ球を火災報知器の電球に使用する分には問題は発生しないのではないでしょうか?」
「えっ? そうなの?」
「はい。ナツメ球の回路については、こういう感じなんですがね」

「こんなに簡単なの?」
「まぁそうです。ブリッジさせているのがLEDか整流ダイオードかの違いはあるでしょう。コンデンサの容量と電圧の違いは気になりますが、電圧が上がっているのではなく下がっているので、壊れることはないかなぁと」
「この『POINT』ってのは?」
「ACをDCにしているので、AC100Vの場合はDC141Vで考えなくてはいけません。実際、ブリッジ分を含めても、両端の電圧は140Vくらいありますから(電流は制限されているから、電圧が高くても順方向には20mA程度しか流れない)、『POINT』の部分のLEDが1個では効率が悪すぎます」
「そんなに悪いの?」
「ナツメ球表示の0.5Wです。分解されている方の話では、10mA程度しか流していないそうですから、周波数分も加味してそういう数値なのでしょう。ですが、LED1個当たりの消費電力は0.007Wです。10mAの場合はこの半分ですから、光への変換効率を考えると、さらに1/8くらいの余裕があるわけですから、球のエネルギー効率は実のところ、白熱球と大して変わらない可能性が高い」
「でもナツメ球は3Wくらいでしょ?」
「その分明るいんですよ。ナツメ球の3Wなら、5~10lmはありますが、LED1個程度だと1~3lm程度でしかありませんから」
「半分以下の明るさになるってこと?」
「日亜の『雷神』クラスだと、50mAで20lm、20mAで9lmですから、10mAだと5lm。ぎりぎりナツメ球相当ですね」
「『雷神』ってのは?」
「市販されている中では、高位クラスのLEDチップです。ですが、その分単価が高いので、こういう製品には使用されませんね」
「もっと性能の悪いものが使われていると?」
「雷神で150lm/Wですから、通常使用されている安価なチップだとこの半分程度じゃないかなって思います。となると、三個程度は使わないと、同等の明るさにはならないというわけです」
「暗いといわれるゆえんはそこか」
「LEDは本当は設計のセンスやら何やらがきちんとできるなら、すでに蛍光灯を超えているんですよ。だけど、市場は玉石混合で古いものから新しいものまで無数にあります。で、安さにつられたり、適当に選んだりして失敗したと」
「そういう連中が、暗いという情報を流すと、LEDは悪いという評価になるのか」
「大手のメーカー品はそれでもきちんとしていますよ。パナソニックのナツメ球だと、さっきの回路とは別の回路ですから」
「じゃぁ、火災報知器の電球に使用できる奴とできないやつがあるというわけか」
「それだけじゃなく、表記も怪しいんですよ。パナの場合は変圧させているので、消費電力の表示はわりと信用できます。安い上の回路だと、実際に10mA流すわけですから100V×10mA×√2で1.4Wの計算。20mAなら2.8Wです」
「えっ!? それじゃ、ナツメ球の消費電力と変わらないじゃん!!」
「ええ、そういうわけです。消費電力が変わらず、明るさは半分から三分の一。安いLEDナツメ球の場合、LEDに交換したら暗くなるだけでメリットは一切ないという」
「どうすりゃいいの!?」
「『POINT』の位置のLEDを複数個直列につないで対応するのが手っ取り早いですね。35個程度まで直列につなげても消費電力は変わらないかと」
「1個あたり1lmでも35lmか。三倍あたりか」
「『雷神』クラスとは言わなくても、性能の良いLEDなら5lm/個は期待できますので175lm。20W電球相当の明るさを確保できます」
「いや、ナツメ球でそれだけの規模だと、逆に明るすぎるわ」
「でしょうね。ともあれ、安いLEDナツメ球と、火災報知器のLED電球の品質に差はありませんというのと、ナツメ球を代替品に使用する場合は、代替元の製品の構造を知っておく必要があるという結論ですね」
「なんか、LEDってめんどうさいなー。」
「ええ。できることが多すぎるため、人が製品を選ぶんじゃなく、製品が人を選ぶ状況下にあります。法の整備もまだまだ遅いですし、虚偽の表示されている製品も少なくはありません。とりしまるべき消費庁の動きをみると、どうにも鈍足ですし、クレーム問題が発生してから動いているところを見ると、職員が製品を評価する能力を有していないようです。『官公庁にISOはいらない』という考えもありますが、教育や力量の部分については、必要でしょうね」
「奴らは一見仕事をしていないように見えても、実際のところは仕事をしているぞ」
「仕事をしていないとは言っていませんよ。仕事を適切に遂行するための能力が不足していると言っているだけでw」
「じゃぁ、実際のところ、消費者はどうすればいいんだ?」
「大手のメーカー品を選ぶ。ホームセンターなんかで売っているよくわからないとか聞いたことのないメーカー品には手を出さない。LEDを選択しない」
「LEDを買うなってこと?」
「人を選びますから、知識に自信のない人は避けるべきでしょう」
「蛍光灯なんも含めてか?」
「全般的にです」
「なんか、LEDのほうが蛍光灯よりも優れているという意見の割には、導入には消極的ないけんだな」
「全光束が同等やそれ以上でも、配光の問題で暗く感じるケースもありますからね」
「は!? そんなことがあるのか?」
「ええ、実は光の偏り方で、人の感覚は変わってきます。光は『降り注ぐ』という表現があるように、基本的には上が明るく、下が暗い場合と、逆の場合とでは、前者の方が明るいと錯覚します」
「はぁ。パッとそういわれてもよくわからないけど」
「人間の感覚のもんだいなんでしょうね。腰より上(下80cm以上)をまぁ、基準と考えてよいかと」(照度の測定がJISでは床下80cmのところで計測なので)
「足元はダメってことか?」
「ええ。このあたりをはっきりと体感したいのであれば、夜間に懐中電灯を持って、天井にむけたり下に向けたりしてみてください。一方向に照らすよりもはるかに暗さによるストレスの感じ方が違いますから」
「つまり、LEDの場合は光が下に集まりやすいから、同じ光束量をもってしても暗いと感じる状況になるってことか」
「照度設計でもこのあたりは出てきません。なので見落とされがちなんですよ」
「じゃぁ、ナツメ球だけじゃなく、LED電球もLED蛍光灯も同じ光量でも問題はあるってことか………」
「LED蛍光灯はこのあたり、最近になってようやく規定が生まれたと記憶していますね。うろ覚えですが下面120°の範囲はランプの全光束の70%未満で横20%、上10%光を放射しなければならない、だったかと」
「となると、照射角120°の蛍光灯は売れないと?」
「官需はともかく、民需はわかんないですね。照射角120°でも需要がないわけではありません」
「なに? あるの?」
「そういう製品を選択したいというケースはありますよ。高所4mの位置に天井埋め込みの照明器具があって、乳白色カバー付き。そういう製品の蛍光灯は、照射角が広すぎる製品を入れても損失が多いだけなので」
「でも光は広がらないんじゃないのか?」
「ホワイトカバーに光が当たってそこで拡散されますし、損失が少ない分ベースの器具光束が増えてますから。とはいえ、蛍光灯よりは横に広がりませんので、天井までの高さが高い場所に限定されます」
「かなり限定されているな」
「ええ。とはいえ、製品の選択幅が広いということは、詳しい人や専門家にとってみればかゆいところに手が届く状況というメリットもあります」
「素人にはわかんねーよ」
「でしょうね。はっきり言ってここまで来ると例外中の例外だから、あまり参考にはならないかな。蛍光灯でも種類が多すぎるので、一概にLEDだけがとも言えませんが」
「とりあえずわかった。LEDを入れる場合は『柾に聞け』ってことだな。周りが噂している通りだ」
「(苦笑)製品の用途と作業環境の適切な情報をいただければ、具体的な製品を選択しますよ。だけど、詳しく聞く気がないとか最終的にこちらが提示した以外の製品を自分で製品を選ぶとか、値段ばかりを気にするなら、『LEDは選ぶな。蛍光灯を選べ。しかも直管タイプで1本あたり32W未満は選択から除外しろ』以外のアドバイスはできませんね」
「やっぱり蛍光灯になるのか。しかも制限あるし」
「ええ。蛍光灯器具の値段はやっぱり、LEDのおかげで下がってますから。蛍光灯で制限を付けているのは、その制限外の製品は蛍光灯と言えどもあまり製品としての性能が良くないので」
「ほんと、メンドクサイな」
「そうですね。とはいえ、このあたりは器具を設計した連中のセンスがないのが問題ですよ。やっぱりこの辺は、運用面のことを考えずに適当に器具を配置しているのがもんだいでしょう。器具の型式の違いの分だけ在庫管理しなければ無なくなりますから」




2 件のコメント:

  1. ウチの会社でも「LEDで水銀燈の代替商品」というのを試したことがあります。どんだけ節電になるか知りませんが、ただのスポットライトですし、照度ありませんし、何より高すぎです。400W相当の器具で1台10万円てw あーた、そりゃ無茶ですわ。

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    1. 名古屋鶏様、まいどです。
      10万っすか。高いっすね。ざっと計算してみますか。

      ランプの更新工事で1万/台くらいと見ますね。
      水銀灯でランプの交換費用を年1回5千円
      LEDが消費電力を仮に100Wとすると、その差は300Wで12時間/日で電気代を計算すると、1万五千/年削減できる。
      年2万円取り戻せるとして、償却まで5.5年かかり………ですが、その2.5年後にLEDは寿命で器具そのものを取り換える必要が出てくると。

      メタハラの場合は交換費込みで器具が5万くらいで消費電力が200Wくらいなので、ざっと計算すると電気代が1万/年削減。
      3年に一回ランプ交換ですから、年13000円取り戻せるとして、約4.5年で償却完了。
      安定器は10年は持つ考えですから、LEDの方がコスト的には若干損です。
      アホな環境事務局は消費電力だけしか見ないでしょうが、、、

      個人的には照度や器具光束ではなく、照射範囲の均一性に着目したほうがよいかと。
      用途次第の面もありますが、基本的には「安全の為」でしょうから、それを満たすことが出来ているかどうかを図るには、照度でも光束でもなく平面及び立面の均一性が重要になってきますので。

      その意味では、照明の「間欠運転」ほど、やっちゃいけないですが、、、、なぜか省エネとISOの両方を額面しかとらない連中は(以下略

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