安田「いやぁ、また事故があってさぁ」
マサ「なんか、まわってきていましたね。大体、二ヶ月に一件くらいのペースですか?」
安田「そうなんだよ。それで社長が「何で減らないんだ!?」「何をやっているんだ!?」って怒るんだよ」
マサ「ああ、それでですか……最近、課内で『安全唱和』なる物を実施するよう、命令が下って課長の指示のもと、あほらしいと思いながら唱和させられていますよ」
安田「野田女史だろ? あのおばさん、対した実績もないくせに上司に取り入るのが上手で、それで出世したからなぁ。事業部長や取締役連中は管理系業務に対して彼女の全幅の信頼を置いて逆らえん状態だよ」
マサ「安田部長でも無理ですか?」
安田「無理だな。指摘するとすぐにブチ切れて喚く」
マサ「もともと彼女を出世させたのは、社内における政治的な背景からでしょ?」
安田「そうだが、出世させる相手を間違えたとしか思えん」
マサ「それは同意ですね。根性論と丸投げと、不満のある社員に対して『別にいいでしょ』の一言で相手の反論を無視して、『了解を得た』という状況証拠をねつ造するのが手段ですからね」
安田「そうなのか?」
マサ「ええ、上に報告されているトラブル解決率は高いでしょ?」
安田「ああ、事業部長は人事面で何かあったら彼女に頼んでいるし、彼女からはいつも『解決した』という事実ばかりだな」
マサ「割とコンプライアンス違反の指示もしますよ? 法令違反を指摘すると『わかった。対策を考えておく』と言ってそれで解決した事例はほとんどありませんし、彼女がどういう指示を出したのか、指示を受けた人に確認すると「『とりあえず今まで通りやって』という指示を受けた」という回答ばかりですから」
安田「本当か?」
マサ「ええ、現場には『検討中』という言葉を使い、検討結果の周知がなされたケースはほぼゼロです。安田部長の話を聞くとどうにも、ほとんどが『解決した』と報告しているみたいですね」
安田「それは困ったな」
マサ「数例ほど、『私知らない』『そんな報告うけたっけ?』とおとぼけている場面を見たことがありますね」
安田「どうしたもんかな……」
マサ「『事故が減らないんだ?』という社長の指示ですけど、まぁ彼女の場合、管理責任者だったころからそれですし、今の管理責任者を統括する立場でもやってることは変わらないでしょうから、そりゃ減らないでしょうねぇ」
安田「どうすればいいと思う?」
マサ「無理じゃないですか?その件で相田が一度指摘したことがあるんですよ。つい最近、書面で」
安田「それは初耳だな」
マサ「まぁ、そうでしょうね。書面の内容は野田女史の段階で『この内容だと、管理責任者が働いていないみたいな悪口みたいに思える』とか言って、承認せずに保留し続けていましたから」
安田「それで、どうなったんだ?」
マサ「野田女史に対して、相田が『問い合わせた』から、その事実が発覚したんですよ。『私が出した指摘はどうなったのか?』ってね。それで野田女史のこの回答に対してブチ切れましてね。課長も日和見ですから沈黙しちゃって、結局指摘自体を取り下げましたよ」
安田「それが事実なら最悪だな……」
マサ「とはいえ、彼女は人事権も握っていますからね。下手に逆らうと人事評価に悪影響が出ます。職位では安田部長の方が上でしょうが(野田女史は次長)、実質の社内での政治力では彼女の方が上ですから、下手な行動は避けられた方がよいかと」